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2015年12月26日

【特別対談】銘苅淳×西村和彦part2

ハンガリーでプレーする銘苅淳選手を追ったテレビ番組『ノンフィクションW 孤高の日本人得点王・銘苅淳 ~欧州で拓くハンドボールの未来~』が、来年の1月16日土曜日13時から、WOWOWプライムで放送されます。ぜひご覧ください。

予告編はこちらから

2015年4月から12月まで、約9ヵ月にわたって銘苅選手に密着したこの番組でナレーションを務め、今や芸能界一の熱血ハンドボーラーと言っても過言ではない俳優の西村和彦さんと、銘苅選手の対談の模様を3回にわたって特別公開します。今回はパート2をお届けします。

前回の記事はこちらから

 

ハンドボールが文化として根づいているヨーロッパ

 

西村「ヨーロッパの選手って、マークしている相手がいるのに、パスしないでゴリゴリ行くじゃないですか。それはプロフェッショナルとして、多分自分が得点をとらないと、チームに貢献しないと、プロ失格と思っているんですよね、多分。その反対で、ハンドボールには犠牲を払いつつ、空いたスペースへパスからのゴールもあるわけじゃないですか。そんな中で、銘苅選手が得点王を獲った(※2014-15シーズン、ハンガリー1部・バルマズイヴァロシュで得点王を獲得)っていうのは…どっちの要因が大きいですか?」

銘苅「今回の場合は、獲らせてもらった感が強いのですね、正直」

西村「その場合は基本的にやっぱり、空いてるところでもらうものが多いのか、それとも自分でゴリッと行く方が多いのか」

銘苅「シーズンの序盤は、センターじゃなくてバックプレーヤーだったんですよ。だから、もうシュートばかり打ってました。だけど、センターになった時は、どうにかして全体をオーガナイズしないといけないので、それも考えながらですね。でも、ここぞというときには自分が点数取らないといけないので。でも、終盤になると相手も分かってくるんですよ。銘苅が1対1してくるから、もう2人で寄れ! みたいな。そういうときはさばく感じです。海外だとシュート打って外しても、『一生懸命やったんだから、しょうがねぇよ』みたいな。『ノーマークいるだろ! おい!』って監督とかめっちゃ怒るんです。もちろん。『パスだろ! 今の!』と言われます」

西村「しかし、『いけると思ったんだもん』って答えるわけですか(笑)」

銘苅「そうそう(笑)。『打って入ると思ったんだもん。しょうがねぇじゃねぇか』と」

西村「ハンガリーのリーグって、アシストポイント的なものはあるんですか?」

銘苅「アシストポイントはないです」

西村「やっぱりないんですね」

銘苅「そこまではされてないですね」

西村「結構必要ですよね。ハンドボールって」

銘苅「ああいうのは価値ありますよね。見てる人は見てますもんね」

西村「だから、僕は子どもを教えるときにいつも心に思うのは、ハンドボールというスポーツが素晴らしいって思うのは、非常に自己犠牲のスタンスもあるじゃないですか。自分が引きつけて、さばいて渡すっていう。これが大人になった時に、俺が俺が! っていう時もあるかもしれないけど、自分がある程度引き受けてだれかを活かす、自分を犠牲にしてだれかを活かすというプレーが、社会人になって、大人になった時に絶対に活かされると思うんですよ。それって、例えば60分間の試合で非常にたくさんあるのがハンドボールだと思う。僕は子どもたちの精神面を鍛えるためにも、すごく素晴らしいスポーツだと思うんですよ」

銘苅「そうですね」

西村「こんな褒めちぎっていいのか、わかんないですけど(笑)」

銘苅「いやいやいや、ハンドボール素晴らしいですよ!」

西村「こんなにおもしろいスポーツ!」

銘苅「みんなが知らないだけ!(笑)」

西村「なんでやらないんだ! みんな! みたいな(笑)」

銘苅「ホントですよ。本当に素晴らしいと思う。それこそ、やっぱり学校体育にはいいと僕は思いますね。もっと、多く学校体育の中で、取り入れてくれたらいいのになって」

西村「元々、だって青少年の身体能力を上げるために考えられたスポーツなんですよね」

銘苅「そうですね、はい。で、それこそ、東京高等師範の先生が日本に1922年に持ってきて、こんな走って飛んで投げて、ぶつかって最適だって言って、学校に広めようとしたのが始まりなんですよね、元々。だから、そういう意味で学校体育の場面でもっと扱ってほしいんですけど、ハンドボールゴールがない学校もありますし、それこそボールがないとか、でもサッカーゴールはあるんですけどね」

西村「そうですね」

銘苅「でも、ヨーロッパに行ったら、必ずハンドボールゴールがあるんですよね、必ず。ああいう文化的なところですよね」

西村「ヨーロッパって外でプレーする国ってあるんですか?」

銘苅「アウトコートがあるところはあります。でも下はグラウンドとかじゃなくて、タータンコートみたいなゴムだったりして。もちろんセメントのところもありますけど。でもハンドボールという競技は室内のスポーツです」

西村「基本的にはそうですよね」

銘苅「基本的には。外で練習することはほとんどないです」

西村「でも現状で、日本では外で練習してる方は多いですよね」

銘苅「多いですね。日本ではそうです。だから、やっぱり技術特性が伸びないんですよ。ボール振り回せないんで。ボールをつかむのが精いっぱいっていうところが多いので。だから、技術的なボールを片手で取って振り回して、みたいな技術が発達しないんです」

西村「それ、銘苅さんが一度他のテレビだと思うんですけど、シングルキャッチ(片手でボールをつかむ)の意味っていうのをすごく大切にしてますよね」

銘苅「そうですそうです。片手をボールで塞いだまま、練習しますよね」

西村「あれはすごいなぁと思いました。あれはやらないと、やっぱり身につかないんですよね」

銘苅「はい」

西村「手がでかいから、握力強いから、の問題じゃないんですよね」

銘苅「問題じゃなくて、いかにこういう(前述の)トレーニングをやってるか、ですよね」

西村「だから、こういうところでも左で取れば早いかもしれないけど、右手で取ることに練習の意義がある」

銘苅「そうなんですよね」

西村「例えばこっち(キャッチしない方の手)を相手につかまれてたら、もう片方しか使えないですもんね」

銘苅「でも片手で取ると、日本人は横着だって言うんですよね。そこが考え方の違いっていうか。大きな部分ですよね。かなり大きな違いがあるっていう。だってプレーの幅が広がりますからね(片手でキャッチするアクション)。それの方が世界的なスタンダードなんだから、そういうトレーニングをした方がいいと思いますね」

西村「シングルキャッチだとか、シングルハンドトレーニングだとか」

銘苅「いいと思うんですけどね、僕は。トレーニングとして、落とし込んでいったほうがいいな、っていう気はします」

西村「ちゃんとした1つの練習の中に組み込むってことですか?」

銘苅「1日の3分でも5分でもいいんですよ。そういうことを意識すれば、それだけで全然違います」

西村「例えば、ハンガリーは何歳くらいからハンドボールを始めてるわけですか?」

銘苅「小さい子は6歳とか7歳とか」

西村「日本と同じくらい」

銘苅「それで3対3です。テニスコートで。ゴールも小さくして。コートも小さくして」

西村「オールコートにならないんですか?」

銘苅「マンツーマンみたいに? でもテニスコートなのでちょうどいいんです」

西村「(コートが)小さめなんですね」

銘苅「日本みたいに(CPが)6人じゃないから、立ってるだけの子がいないんです。日本にはただ走って立ってるだけ、往復してる子っているじゃないですか。小学生とか見てても」

西村「いますいます」

銘苅「そういう子がいないんです。3人だったら、だれかしら、みんながゴールに絡んでいくから。1人ひとりがプレーしないと、もうプレーが成立しないというか」

西村「基本、3対3?」

銘苅「6~8歳ぐらいまでは。10歳までそうじゃないかな? オールコートでやるって、12くらいからですかね」

西村「小学校5、6年」

銘苅「10歳以下はボールもスポンジでつかみやすいやつだし、3対3っていうのが主だと思います。だからおもしろいですよ、本当に。7、8歳でも相手をつかんでひっくり返ったりします」

西村「ボディコンタクトもするんですね」

銘苅「それでも引きずってシュートをするんですよ。だってそれがハンドボールだから。あの子たちからしたら」

西村「そっちから入るんですね」

銘苅「だから、彼らは見てるから。プロのハンドボールを小さいころから見てるんで、イメージがそうなんです。『引きずってでもシュートを決める。シュートを打って倒れこむ』。そういうイメージがあって」

西村「そっちから入ってるんですね。情報量が多いから、彼らはその情報量から自分のプレーをクリエイトしてるんですね」

銘苅「最初は真似してるかもしれないし、あの選手の…とかやってるかもしれないし」

西村「日本の場合は、とりあえず指導者から言われたことをやり、初めて身体ができてから考えるんですね」

銘苅「ハンドボールとはなんぞや? っていうのは海外の子どもは見てるんです。でも日本の場合、中学校から始めましたって言ったら、その教えてもらってる先生以上のハンドボールを触れる機会がないので。テレビではやらないし、近くに日本リーグがあるかって言ったらないですし。日本リーグが近くでやってるのに、自分たちの練習試合が優先されるし、みたいなことの方が多くて」

(番組スタッフ)「ハンガリーにいっしょに密着して行ったんですけど、試合に来ている小さい子どもたちに『銘苅選手のこと知ってます?』って聞いたら、『彼の走り方を真似してます』って言うんですよ。小さい子が。それくらい、トップ選手が身近であるし、ハンドボールって身近であるんですね。あと、ヨーロッパのクラブ文化っていう素晴らしさもありますよね」

銘苅「僕がストレッチしてるじゃないですか。そしたら、小学生10~12歳くらいの男の子が走ってきて、『メカ! メカ! ~×○△※』ってハンガリー語でしゃべりかけるんです。僕、そんなにハンガリー語わかんないから『うん、うん』って言いながら、わかんないんです(笑)。『なに言ってるかわかんない。ごめんね』って話をして、近くにいる選手に聞いたりしながらもコミュニケーションとったり。興味があるんですよね。彼らからしたら。(日本も)そういうふうになったら、もうちょっと変わると思うんですけど」

西村「ホントに、僕とかもやれることは微々たるものだとは思うんですけど、ただ、本当に今、サッカーやバレーや野球とかじゃなくて、ハンドボールを選んでやってくれてる子どもたちに対して、大人である僕らはなにかをしてあげたいっていうのは本音なんですよね。ハンドボールやってたし、今でも現役でやってる自分としては、やっぱりそのスポーツをやってくれてる子どもたち、またもしくは『やりたいなー』って思ってやれない環境の子どもたちに対しても、これからなにかいろんなことやっていかないといけないと思ってるんですよね」

銘苅「そうですね」

西村「そういう時に銘苅さんの活躍とかを見て、これをちゃんとした場所で電波を使って、メディアを使って、インフォメーションすることをやっぱりやっていかないといけないと思います」

銘苅「いや、もうそこは僕は西村さんに期待しています」

2人「(笑)」

銘苅「僕が1から100言うより、西村さんが2言った方が、全然いけると思いますから」

西村「テレビに出るたびにハンドボール、ハンドボールってぶつぶつ言ってますからね。元ハンドボーラ―っていうか、元々ハンドボールやってた芸能人たちをいろいろ引っ張り込んではいるんですけども、みんな経験者なんで、あのキツさを知ってるんですよ。『○○くんやろうよ!』『○○さんやろうよ!』とか言っても『あー、ケガしたくないな』とかね。だから、本当にね、仕事もやりながらっていうのが、それを生業としてるわけではないので、趣味としてやるにはあまりにもハードなスポーツ、とみんな分かってるんですよ」

銘苅「僕も西村さん、ケガしたらどうするんですかね? っていう話をしていました」

西村「練習は実際、倒れそうですよ。僕もいつも思うんですよ。ケガしないようにケガしないようにと思っていても、そんなケガしないように手を抜いてプレーするほどはうまくないので。自分のポテンシャルぎりぎりまで引き上げてやらないと、ついていけないので。それはもう必死に。その代わり、僕あまり腰がよくないので、日々自分の体幹トレーニングと背筋は固めとかないと」

銘苅「プロだ。聞かせてあげたい。自主トレなんか一切しないハンガリー人に(笑)」

西村「僕は多分若かったらやらない。ある程度、年齢を重ねて、自分のどこが悪いって分かってるんで、だましだまし…。でも、そんなに身体がボロボロになることが分かっていても続けたいんです。このスポーツはね」

銘苅「やっぱおもしろいからですよね」

西村「おもしろい。これ分かってもらいたいなぁ」

 

第1回から2人の勢いは増すばかり。最終回はどうすればハンドボールを
日本で広めていけるかについて、さらに熱く語り合います。
特別対談の最終回はこちらから。


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