2017年8月22日
第42回日本ハンドボールリーグ(JHL)が、8月26日に開幕します。来年3月までの長丁場がいよいよ始まります。開幕を控えた21日、男女の監督が一堂に会して開幕記者会見が行なわれました。
今大会は大きく変わったポイントが3つあります。
1つ目は新たに女子2チームが参戦したこと。富山を本拠地とするプレステージ・インターナショナル アランマーレ、大阪が拠点の大阪ラヴィッツが今シーズンから戦いの場をJHLに移しました。
これにより、女子は試合数が大きく増えました。また2回戦総当たりだった男子も第30回大会(2005-06シーズン)以来となる3回戦総当たりになり、より多くの試合をすることになりました。前回大会は男女合わせて135試合だったのが、今シーズンは1.6倍の216試合。選手、運営含めよりハードなシーズンになりますが、多くの試合をこなすことは競技レベル向上につながります。こちらが2つ目の変更点になります。
そして最後は、プレーオフがステップラダー方式へ変わったこと。これまで、レギュラーシーズンの上位4チームがプレーオフに進み、2日間の開催のうち初日に準決勝(1位-4位、2位-3位)、2日目に決勝戦が行なわれていましたが、今シーズンからは3日間の開催へ。初日は1stステージとして、レギュラーシーズン3位と同4位が対戦。2日目にレギュラーシーズン2位のチームと1stステージを勝ち上がったチームが戦い、勝ったチームが最終日のFinalステージでレギュラーシーズン1位チームと優勝をかけて激突する形になります。よりレギュラーシーズンの順位に重みがある方式になりました。
今シーズンを戦うにあたり、出席した各チームの監督、ヘッドコーチがスローガンとともに意気込みを述べました。まずは男子チームの監督のコメントを紹介します。
【男子チーム】
・トヨタ自動車東日本(昨シーズン7位)
スローガン「ONE TMEJ ONE REGAROSSO」
中川善雄監督「昨シーズンはほかの大会では過去最高だっただけに、リーグ戦のみ非常に不本意な成績だった。一昨年に初のプレーオフ進出を果たし、さらに高みをめざそうとしていたが、ここ2年くらいケガ人に泣かされてきた。もともと人数が多いチームではないので、(選手不在のため)不慣れなポジションに入った選手たちはよくがんばってくれたが、そこでもケガ人が出てしまうという非常に悩ましいシーズンだった。その分、いろいろ経験をさせてもらったので、今シーズンはそれを踏まえながら、選手1人ひとりが自立し、そして初心に返りたい。そうした意味で創部以来変えてこなかったスローガンを変えようとも思ったが、自分自身含めここでさらに初心を思い出すためにも変えずにきた。(スローガンにある)『ONE』のように、チームが1つになって今シーズンも戦っていきたい」
・大崎電気(同優勝)
スローガン「FOR THE TEAM! THINKIMG HANDBALL!!」
岩本真典監督「東日本の中川監督同様、私も就任以降スローガンは変わっていない。リーグ戦が3試合制になる。(ほとんどの選手が)初めての経験なので、レギュラーシーズンをどう戦っていくか不安だが、昨年同様、一戦一戦勝利をめざして戦うことに変わりはない。まずはレギュラーシーズン1位をめざして戦っていきたい。新人は1人だけで、昨年から戦力は大きく変わらず、やっていくハンドボールも変わっていない。その分、精度を上げて戦っていきたい」
・北陸電力(同9位)
スローガン「不撓不屈」
前田亮介監督「まずは4年連続で勝点0という流れをすぐに切って、今年こそ必ず最下位を脱出したいと思っている。選手たちもそれに対してすごく意気込みが強い。新戦力も6名入り、戦力も充実してきたので、今シーズンもがんばっていきたい」
・大同特殊鋼(同2位)
スローガン「挑戦 ~日本一へ拘り、挑戦し続ける~」
岸川英誉監督「今シーズンのスローガンは、世界に通用するチームになるために、日本一に拘り、挑戦し続ける、という思いからつけた。ポイントとしては基礎を徹底すること、身体作りや筋力、スピードアップにもう一度挑戦すること。そして、チームスポーツなのでチーム最優先の行動で、チームワークを向上させることに挑戦していきたい。今シーズンは、見ていただいている方、応援していただいている方、会社、家族、友人に日本一という結果で応えていきたい。まずはプレーオフのチケットを獲得できるように大同らしく一試合一試合戦っていく」
・トヨタ車体(同3位)
スローガン「責任/覚悟」
香川将之監督「今シーズンから監督になるにあたり、まず選手たちになにが足りないかを考えた。その結果、スローガンの『責任/覚悟』になった。ハンドボールのパフォーマンスに対する責任に加え、会社での生活、行動、発言にももっと責任を持ってほしいし、またハンドボールで勝つためになにかを犠牲にしてでもやり切る覚悟を持ってほしくてこのスローガンにした。チームとしては今年で創部50周年を迎える。これまでプレーオフ優勝の目標を掲げてきたが、まだなし得ていないので、今年こそプレーオフ優勝を達成するためにスローガンのもと、チーム一丸となってがんばりたい」
・豊田合成(同5位)
スローガン「Catch the dream」
田中茂監督「スローガンは日々のテーマでもある。選手たちには今年度はチャンス(Chance)である。それに対してみんなでチャレンジ(Challenge)していこう。チームとしてチェンジ(Change)していこうと、伝えている。この3つの『C』をテーマに、最終目標である『Catch the dream』にたどり着きたいと思っている。チームとしては諦めないチームを作っていこうとしている。そのために体力強化、そして私自身がテーマにしているスピード、OFのスピードもさることながら、DFでもスピードにテーマを置いている。守りを固めて、プレーオフ進出を果たしたい」
・湧永製薬(同4位)
スローガン「Endless Challenge」
杉山裕一監督「スローガンはチームの恒久的なもので、ひたむきに挑戦しようという過去の先輩方から引き継いだもの。チームの全員が思っているのは、負けっ放し、悔しさ、ということばかり。その中で大きなケガなくやり切るという決意のもと、全員がスタートラインに立ってくれている。もう一度勝者のメンタリティーを取り戻して、ほかの8チームに挑戦してきたい。めざすものは日本一、死守するのはプレーオフ出場」
・トヨタ紡織九州(同8位)
スローガン「団結」
石黒将之監督「私が就任して今年で4年目。チームには若い選手が多く、昨シーズンは試合の終盤に辛抱しないといけないところでイライラが出てしまい、失速してしまうところがあった。なので今シーズンはチームが団結して勝利をめざしていこう、ということでこのスローガンを掲げている。昨シーズンの終わりから、韓国代表の金東喆が加わり、若いチームを引っ張ってくれている。一番の課題だった経験については、オフシーズンの間、北電や大崎の胸を借りながら2週間に1回のペースで練習試合を組んできた。そして会社のバックアップもあり中国、韓国へ遠征に行かせてもらい、試合ごとに課題をしっかりと出して、それを修正するということを繰り返してきた。個人的な思いになるが、開幕戦で戦うトヨタ車体の香川監督は大学(中部大)の1つ上の先輩になるので、胸を借りる気持ちで戦いたい。だれが出てもチームの力が落ちないのがうちの特徴なので、3試合制で長期間の戦いでも、1試合1試合大切に戦っていきたい」
・琉球コラソン(同6位)
スローガン「NEXT ONE」
水野裕紀監督「チームスローガンの意味は、現状の自分たちや環境に満足することなく、明日はもっとよくしよう、次はもっとよくしよう、さらには新しいことに挑戦してどんどん貪欲に取り組もうというもの。毎年、チームの主力が入れ替わってきたこともあり、なかなかチーム作りで難しいところがあるが、今シーズンは非常にまとまりがあり、チームスローガンのとおり挑戦する気持ちがある選手が多い。毎日貪欲にトレーニングに取り組んでいるので、僕自身も楽しみだし、ぜひ日本リーグを盛り上げていきたい。さらに今シーズンでチームは10年目の節目を迎える。この年に悲願の日本一を達成したい」
質疑応答では今シーズンから監督に就任した3人の監督に自分たちのカラーをどう出しているか、という質問がありました。
車体・香川監督「酒巻前監督が10年間、チームにかかわっていたので、(やり方が)すごくチームに定着している。私もその中でプレーしていたので、私らしさを出そうとすると、似ているようになるかもしれないが、私がやりたかったハンドボールを少しプラスしていく形で、各試合のどこかで出していきたい。練習では選手兼コーチの期間が長かったので、監督というよりも選手側に寄ってしまうことがあるので、うまく線引きをしながら監督として選手たちに見てもらえるように努力している」
合成・田中監督「畠中前監督は、サポートという形でコーチに就任している。ここの継続はあるが、やはり体力をテーマに置きたいと思っている。昨シーズンのゲーム分析をしても、上位チームといいゲームをしていたり、逆に昨年の下位チームに足元をすくわれたりと非常に波があった。それをひも解くと、個人の戦力、ケガもあるが、次の選手が育っていなかった。チームの底上げという意味で、当然かもしれないが全選手に同じトレーニングを課している。また、ほとんどのトレーニングを数字で表すようにした。例えば1日の練習でシュートを何本打って、何本入ったかなど。速攻にしても、ハーフラインを2秒以内に越えるといった明確な数字を出している。それがリーグ戦で結果になってくれればと思っている」
杉山監督「中山前監督は、堅実で基本に忠実な練習を組み立てており、その積み重ねがプレーオフ進出につながったと思う。それにプラスして、まだまだ相手につけいるスキがあるだろうと。そうした見極めを選手たちに求めている。大前提としてDFがあるので、そこを選手に植えつけていきたい」
続いて、女子チームの監督、ヘッドコーチのリーグ開幕へ向けてのコメントと、質疑応答であった今シーズンの注目選手を合わせて紹介します。
【女子チーム】
・プレステージ・インターナショナル アランマーレ(新規参戦)
スローガン「The sky the limit ~頂戦~」
大森聡監督「スローガンは可能性は無限大であるということわざから。それに合わせて頂への戦いという言葉を用いて、これからチャレンジしていくんだという気持ちを表現した。戦うからには勝利をめざして、プレーオフ進出を目標にしている。チームとしては実績のある横嶋かおる(元北國銀行)がめだたないような、そんな選手が出てきてチームが活性化していくシーズンにしていきたい。そういった意味でGKの安田絢恵が注目選手」
・北國銀行(昨シーズン優勝)
スローガン「ONE FOR ALL ALL FOR ONE」
荷川取義浩監督「(8選手が日本代表の活動をしていたこともあり)なかなかチーム練習ができない中で開幕を迎えることになったので、昨シーズン以上に緊張感を持っていきたい。チーム内の競争も激化しているので、それをチームの強化につなげて、来年3月のプレーオフ出場に向けて、1つひとつ階段を上るように育成、強化しながら戦えれば。昨シーズンから交代しながら出場していた永田美香の成長がチームに直結するので、彼女に注目してほしい」
・飛騨高山ブラックブルズ岐阜(同7位)
スローガン「歴史(変わる・変える・変えてやる)」
山川由加監督「チーム発足から今年で5年目、スローガンの『歴史』というのは、これまでの4年間、歴史を着実に歩んできたと思うので、5年目も1つずつ積み重ねていくんだ、そしていい5年目を終えるんだという意味でつけた。『変わる・変える・変えてやる』は選手がスローガンとして掲げているもので、環境などいろいろなものが変わっていく中で私たち自身が心を入れ変える、私たちが変わっていく、仲間を変える、そして歴史をいいものに変えるという意味がある。周りの期待も高まっているのでプレーオフ進出、そして頂点をめざして開幕からがんばっていきたい。注目選手は左利きの岸本奈緒。まだまだ荒削りだが、シュート力はすごい。外す時もすごいけど。彼女を観察してほしい」
・HC名古屋(同6位)
スローガン「覇気」
新井翔太ヘッドコーチ「昨シーズン、長く続いた最下位を脱出することができた。さらに上をめざす今シーズンは、覇気を持つことが重要になる。試合に勝つためには際の勝負の積み重ねが必要で、そこで勝つためには、1人ひとりがコート外でどれだけ覇気を持って過ごせるかにかかっている。普段の習慣、気配りが、極限状態での勝つか負けるかにつながるはず。そこで勝つために普段から覇気を持って生活することという意味でこのスローガンを掲げている。今シーズンは覇気を持って、球際のところで勝負し、プレーオフ出場を目標にしていきます。注目選手は髙宮咲。センス抜群なプレーに加えて彼女はプロ意識も高く、スローガンの覇気をいちばん体現できる。また、笠原有紗は昨シーズンの最優秀新人賞を獲得しており、(マークが厚くなる)2年目の今シーズンでは彼女がどれだけカラを破れるかがカギになると思う」
・三重バイオレットアイリス(同4位)
スローガン「Super Violet Soul」
櫛田亮介監督「めざすのは日本一で、なんのために日本一になるのかをクラブ内で共有している。女性クラブチームであるわれわれが、クラブチーム、そして女性の可能性にチャレンジして、日本のスポーツシーン、ハンドボールシーンを動かしていこう、新しいものに変革していこう、という意味でこのスローガンを掲げている。日本代表の角南(果帆)と池原(綾香)の2選手がチームを離れたことが、昨シーズンからの大きな変化点。この2人のポジション(ポスト、右サイド)をルーキーも含めてチーム内で競争している。今年もプレーオフ進出をめざして、日本一に挑戦したい。注目は地元・三重県出身の万谷由衣とルーキーの島居宏汀の2選手。万谷は日本代表選手が不在の間、チームの最年長として引っぱる精神的な強さと、破壊力のあるステップシュートが魅力。島居は高低の駆け引きができるサイドシュートが魅力的で、池原の抜けた穴を充分に埋めてくれると期待している」
・大阪ラヴィッツ(新規参戦)
スローガン「『想いをつなげ』と、ボールが言う。」
中村博幸監督「企業の人々、部員、応援してくれている大阪ハンドボール協会の人々の想いをつないで戦いたい。経験値の少なさが不安ではあるが、選手兼ヘッドコーチの田中美音子がチームを引っぱってくれている。彼女はリーグ通算得点トップ(1426得点)で、今後もさらに伸ばしていってくれるだろう。一戦一戦全力を尽くして、勝点を増やしていきたい。成長してほしいのはGK泉幸歩。先日の韓国チームとの試合で大活躍したと思えば、簡単なシュートを止められなかったりと、強さともろさが同居している。日本リーグ一の大型GK(176cm)として活躍に期待している」
・広島メイプルレッズ(昨シーズン2位)
スローガン「続・力戦奮闘」
金明恵監督「若いチームなので、安定して力が出せておらず、波があるためこのスローガンにした。昨シーズンは主力選手が抜けたり、韓国人選手(李美京)の獲得などでチームに変化が出た1年だったが、なんとかプレーオフ出場を果たせた。今年は有望な新人も獲得できたので、チームのスタイルにマッチさせながら戦い抜きたい。昨年同様、プレーオフ出場は当たり前で、さらに王座の座を奪還すべく、試合終了のブザーがなるまで力戦奮闘していきたい。注目選手は眞継麻礼で、少しのスキ間でも飛び込んでいき、戻り(バックチェック)でも活躍してくれる。さらに新人の三田未稀は即戦力としてコートに立つので注目してほしい」
・オムロン(同3位)
スローガン「百折不屈」
黄慶泳ヘッドコーチ「ここ2、3年、プレーオフ優勝から遠ざかっており、チームの方向性を見失わずスピードを持って戦うことが大切だと考えいる。昨年度のスターティングメンバーから3人が引退し、今は次の世代の選手が引き継いでがんばっている。若い選手たちもコートに立てるようになってきた。長いシーズンが始まるが、選手とともに成長しながら、優勝に向けてがんばっていく。
未完成ではあるが、これからチームの主力になってもらいたいのは、OFでは石井優花、DFでは福井亜由美。石井は今までのシュートに加え、ゲームメイクもしてもらいチームの攻撃力を高めてほしい。福井は昨シーズンはケガで苦しんできたが、今シーズンはしっかりと動けるようになってきたので、永田(しおり)と東濱(祐子)のポジションを引き継いで層を厚くしてほしい。この2人は今後のチームの大きな戦力となるので、今シーズンの出場時間は増えるでだろう」
・ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング(同5位)
スローガン「継続」
大城章監督「昨シーズンを振り返るといい試合と悪い試合の波が大きかったように感じている。悪い時間を短くして、いい時間を継続すること、自分たちのめざすプレーを継続できることが大切になる。それをプレーオフ進出につなげていきたい。今シーズンは移籍選手、新人4選手を獲得したことで、チーム内の競争も激化している。昨シーズンとは違ったメンバー、違ったハンドボールが見せられるようにトレーニングを重ねていき、1つでも多く勝ち、そしてプレーオフ進出を必ず達成したい。注目の選手はセンターの鈴木理紗。私のめざすハンドボールを体現できる選手で、センターとしてチームをけん引してもらっている。さらに松村杏里もケガから復帰し、中央のDFに入ってもらっている。完全復帰までまだ7、8割程度だが、彼女の復帰は選手層の厚みが増すうえに、サイドからの得点も増える」
仕上がりに自信があるチームもあれば、少々不安を抱えながら開幕を迎えるチームもあるといった印象でした。果たして来年3月11日までにわたる長き戦いをどのチームが制するでしょうか。
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